身内が亡くなると通夜、葬儀を行うと思います。それらが終わったとしても一段落すると思いきや故人の年金や保険、銀行などの手続き関係に入らないといけません。
葬儀により精神的にも身体的にも疲労のあるなかで手続きを進めるので大変ではありますが、葬儀後の手続きの中には、期限制限が付属しているものも多々あるので、あらかじめ把握しておくことが大切です。
様々な手続きが必要となりますので、期限が迫っているものや準備や作業に時間を多く要するものから行っていくことがおすすめです。
1.葬儀の後に必要となる手続き一覧(時系列順)
最初は葬儀後にやらなければいけないことを、期限制限がある順に紹介します。
- 死亡届・死体の火葬埋葬許可申請
- 年金受給権者死亡届
- 介護保険資格喪失届
- 住民票の抹消届
- 遺言書の検認
- 国民健康保険の脱退
- 雇用保険受給資格者証の返還
- 所得税準確定申告、納税
- 生命保険の死亡保険金請求
- 国民年金の一時死亡金請求
- 国民健康保険の葬儀費用請求
- 国民年金の遺族基礎年金請求
見てのとおり数が多いため、優先する物を区別して一つずつしっかりと終わらせていきましょう。後にすべてを詳しく紹介していきます。
2.葬儀後に優先的に行うべき手続き
葬儀以前や以後に、早めに行わないといけない届け出や手続きには、次のようなものが挙げられます
死亡届・死体の火葬埋葬許可申請
死亡届とは、死亡した本人を証明するためにある公的な証明書のことを指します。この届出が受理されて初めて住民票に死亡が記載されることになります。
亡くなった際に、医師などから死亡診断書が交付された場合には、それを届け出ることで死亡届を受け取ることが可能となります。
また、死亡した後に本人を火葬する場合には火葬許可証というものが必要になります。これは死亡届を提出するときに自治体から交付されます。
この許可証があってはじめて葬儀で火葬することができます。
■提出期限
・死亡を知った日から7日以内。
■手続き場所
・死亡地か本籍地、もしくは届け人の本籍地のいずれかの市町村役場。
※亡くなった人の住所地の役場では提出できないため、本籍地を知っておくことが大切です。
■持ち物
・死亡届の場合: ・医師による死亡診断書(警察による死体検案書)
・届出人の印鑑
・火葬埋葬許可申請の場合: 死体火葬許可申請書
届出人になる場合は、以下のような関係性の方がなることが望ましいです(優先順位が高い順に記載しています)。
① 亡くなった人の親族
② 同居人
③ 家主、地主、家屋管理人、土地管理人
④ 同居していない親族、後見人、保佐人、補助人
ここまで述べてきた死亡届提出の手続きや火葬許可申請書の手続きは基本的に葬儀会社が代わりに行ってくれます。このケースでは、届出人と代行者の印鑑が必要になるので必ず準備してください。
また、死亡届と火葬許可申請書は保険金や遺族年金などの請求の際にも必要となります。そのため、事前にコピーを複数枚取っておくことをおすすめします。
年金受給権者死亡届
故人が年金の受給をしていた場合は、亡くなられたので年金受給を停止する必要があります。この手続きが遅れてしまい、死亡後もなお年金の支払いが続いていると、その過分を返還しなければなりません。
一方、未支給の年金はその不足分を、生計を共にしていた遺族が受け取ることが可能です。年金受給の停止をすることと伴に手続きをするのがいいでしょう。
■提出期限
・国民年金: 死亡日から14日以内
・厚生年金: 死亡日から10日以内
■手続き場所
・国民年金の場合: 住所地の市町村役場
・厚生年金保険: 社会保険事務所など
■持ち物
・年金受給者死亡届
・故人の年金証書
・死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本、死亡診断書のコピーなど)
その人の状況などにより必要となるものは異なります。詳細は年金受給権者死亡届の注意書きを確認するといいでしょう。
年金受給者死亡届に関しては日本年金機構のホームページからもダウンロードが可能です。
また、平成23年7月以降において、日本年金機構に住民票コードを登録されている方は、基本的には死亡届の提出を省略できます。
介護保険資格喪失届
65歳以上または、40歳以上65歳未満の方において要介護認定を受けていた際に死亡した場合、介護被保険者証を返還する必要があります。
介護保険資格喪失届を取り寄せるのには市区町村役場のホームページからダウンロードが可能です。
■提出期限
・死亡日から14日以内
■手続き場所
・市区町村の福祉課などの窓口
■持ち物
・介護保険資格喪失届
・介護被保険者証
住民票の抹消届
死亡などの事情により、住民としての役割を果たせる状態ではなくなったときに、住民票から消除する手続きのことを住民票抹消届といいます。ただ、死亡届の提出によって自動的に処理されていきます。
また、故人が世帯主の場合、世帯主変更届の提出が必要になります。
■提出期限
・死亡から14日以内
■手続き場所
・市区町村役場の戸籍・住民登録窓口
■持ち物
・届出人の印鑑と本人確認できる証明書類(免許証、パスポートなど)
遺言書の検認
故人が遺言書を残していた場合、その遺言者による自筆証書遺言を保管している人もしくは発見した人は、遅滞なく家庭裁判所での検認を受けなければならないと法律(民法)により定められています。
もし、この検認の手続きを行わずに相続人が遺言書を勝手に開封すると、5万円以下の過料に科されます。この検認手続きを踏んでいない自筆証書遺言は銀行や法務局も手続きを受け付けません。ですので、検認手続きに関しては注意する必要があります。
■提出期限
・期限はありませんが速やかに
■手続き場所
・遺言者の住所地の家庭裁判所
■持ち物
・遺言書原本
・検認申立書
・遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
国民健康保険の脱退
故人が国民健康保険に加入していた場合、国民健康保険の脱退手続き(国民健康保険証の返却)が必要となります。
■提出期限
・死亡から14日以内
■手続き場所
・市区町村の国民健康保険窓口
■持ち物
・国民健康保険異動届(資格喪失)
・国民健康保険証(原本)
3.葬儀後、できる限り早期に行うべき手続き
上記で紹介した6つが優先的に行うべき手続きでしたが、次に紹介する手続きは上記より最優先するわけではないものの、葬儀を実施した時期くらいからなるべく早期に行う方が良いものです。
雇用保険受給資格者証の返還
故人が死亡した際に雇用保険を受給していた場合、手続きを行う必要となります。
■提出期限
・死亡から1ヶ月以内
■手続き場所
・受給していたハローワーク
■持ち物
・受給資格者証
・死亡診断書(死体検案書)
・住民票など
所得税準確定申告、納税
納税者が死亡した場合にその故人が行うべき申告を相続人が行うことを「準確定申告」といいます。この申告は被相続人が死亡した年の所得税を申告・納税する手続きのことです。
■提出期限
・死亡から4ヶ月以内
■手続き場所
・住所地の税務署、または勤務先
■持ち物
・死亡した年の1月1日から死亡日までの所得の申告書
・生命保険料の領収書
・医療控除証明書類など
生命保険の死亡保険金請求
故人が生命保険に加入していると、請求により死亡保険金が支払われます。
■提出期限
・死亡から3年以内
■手続き場所
・契約会社の請求窓口
■持ち物
・死亡保険金請求書
・保険証券
・最後の保険料領収書
・保険金受取人と被保険者(故人)の戸籍謄本
・死亡診断書
・受取人の印鑑証明書
4.葬儀後における相続に関する必要な手続き
ここでは、相続に関係する手続きについてご紹介していきます。故人が亡くなると、相続が発生します。その際には状況により相続の放棄、相続税の申告や納税などの行動をとります。
こちらもなるべく早く取り掛かり、遅れ過ぎないようにしましょう。
故人が生前に所有していた不動産や自動車の所有権などは相続財産としてみなされるものもあり、名義を変更に遺産相続の手続きが前提として存在する場合も多々あるので気を付けましょう。
自動車所有権の移転
自動車は相続財産(遺産)となる動産になります。遺言書や遺産分割協議により相続人を確定させて、所有権を故人から相続人に移行します。
■提出期限
・相続から15日以内
■手続き場所
・陸運局支局
■持ち物
・所有権移転申請書
・自動車検査証
・被相続人(故人)の戸籍謄本
・除籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・改製原戸籍謄本
・印鑑証明書
・相続人の委任状
・遺産分割協議書(陸運局所定の用紙)
・手数料納付書
・自動車税申告書
・車庫証明書など
相続放棄
相続放棄とは、被相続人の財産及び債務に関して相続人がすべてを相続しないことをいいます。被相続人の財産の割合がプラスよりマイナスの方が多いケースでは、「相続放棄」をすることにより、プラス財産を放棄はするものの、被相続人のマイナス財産、つまり債務の負担を回避できます。
■期限
・相続開始後3ヶ月以内
■手続き場所
・家庭裁判所
相続税の申告
被相続人の遺産について相続税がかかってくる場合、故人に関係する相続人全員が相続税の申告をする必要があります。相続税は相続人が個々に取得した財産について相続税が課されます。そのため、申告期限(10ヶ月)までに遺産分割協議が相続人間で調整されていることが前提です。
■期限
・相続開始を知った日から10ヶ月以内
相続税の納付
相続税を納付する手段としては、現金納付のほかに、延納(国に借金する事)や物納(物で納める事)による手段があります。
■期限
・相続開始を知った日から10ヶ月以内
不動産の名義変更
故人が所有していた土地や建物などの不動産に関して相続する場合、登記簿の名義変更を行います。
■期限
・相続確定後速やかに
■手続き場所
・地方法務局
■持ち物
・登記申請書
・被相続人(故人)の戸籍謄本
・改製原戸籍謄本及び住民票除票
・故人の除籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・印鑑証明書
・相続する人の住民票
・遺産分割協議書
・固定資産評価証明書
5.補助金や給付金、高額医療費払い戻しなどに関する手続き
高額医療費の払い戻しや葬儀費用の補助金、年金の一時金などの遺族に金銭が支給される制度も存在します。ここではそれらを紹介していきます。
国民年金の一時死亡金請求
国民年金の保険料を3年以上納めている人は、障害基礎年金・老年基礎年金の両方とも貰われていないまま死亡したとき、故人と生計をともにした遺族に対して保険料納付期間に応じた定額の死亡一時金の支給があります。
ただ、遺族が寡婦年金や遺族基礎年金の受給資格を持つ場合、死亡一時金は貰うことはできません。
■期限
・加入者が死亡した日から2年以内
■手続き場所
・市区町村役場の窓口、年金事務所、年金相談センター
■持ち物
・故人の年金手帳
・故人の戸籍謄本
・故人と請求者の住民票
・受取先金融機関の通帳等(本人名義)
・印鑑(認印可)
国民健康保険の葬儀費用請求
国民健康保険の被保険者が死亡したとき、葬儀や埋葬の際に葬祭費が支給されます。この支給の手続きは保険証を返還するのと併せて行うといいでしょう。
■期限
・加入者が死亡した日から2年以内
■手続き場所
・市区町村の国民健康保険担当窓口、または社会保険事務所
■持ち物
・葬祭費支給申請書
・国民健康保険証
・葬儀社の領収書など
・印鑑、受取人の振込先口座通帳
国民年金の遺族基礎年金請求
国民年金に加入している方が死亡したとき、その故人により生計が維持されていた子供のいる妻、または子供について年金が支給されます。
ただ、故人が保険料を納めている期間(免除期間を含む)が加入している期間の3分2以上であって、亡くなる月の2か月前までの一年間において保険料の未払いがないことが適用の条件となります。期限は子供が18歳になった年度の末日まで支給されます。
■期限
・死亡した日から5年以内
■手続き場所
・住所地の市区町村国民年金窓口
■持ち物
・国民年金遺族基礎年金裁定請求書
・故人の年金手帳
・戸籍謄本、死亡診断書のコピー
・源泉徴収票
・印鑑
・振込先口座通帳または口座番号
その他
遺族について金銭が支給される制度はこれらの他にもあります。ですので、故人が加入していたものについて把握しておく必要があります。
また民間の生命保険金などについてもなるべく早期に請求することをおすすめします。
【船員保険加入者の場合の葬祭料、家族葬祭料請求】
船員保険組合に加入していた人が職務外の事情により亡くなった場合、また扶養者となっている家族が亡くなった場合、葬祭料・家族葬祭料として5万円が支給されます。
■期限
・葬儀から2年以内
■手続き場所
・健康保険組合または、社会保険事務所
■持ち物
・船員保険葬祭料(家族葬祭料)請求書
・船員保険証
・死亡診断書のコピー
・印鑑
・振込先口座番号
高額医療費制度
【高額医療費制度】
1か月の医療費の自己負担額が高額になった際に、高額医療費の申請により、70歳未満である方は、窓口に「健康保険限度額適用認定申請書」を提出して認定証を交付してもらうことにより、自己負担の限度額を一定数超えた金額が戻ってきます。事前申請することが原則とされていますが、死後の申請も可能です。
70歳以上の方の場合は、申請の手続きを行わなくても、公費負担分を差し引いた自己負担限度額のみが請求されます。保険組合により払い戻しのシステムに違いがあるので、まずは問い合わせることをおすすめします。
■期限
・対象の医療費の支払いから2年以内
■手続き場所
・被保険者(故人)の健康保険組合または、社会保険事務所、市区町村国民健康保険の窓口
■持ち物
・高度医療費支給申請書
・高度医療費払い戻しのお知らせ案内書
・健康保険証
・医療費の領収書など
・印鑑
・受取人の振込先通帳または口座番号
【労災保険の埋葬料請求】
労働者が業務上における事故により亡くなったと場合、遺族に対して労災保険から埋葬料が支給されます。
■期限
・葬儀から2年以内
■手続き場所
・故人の勤務先を所管する労働基準監督署
■持ち物
・埋葬料請求書
・死亡診断書(または、死体検案書)のコピー
6.期限は設定されてないものの、早期に手続きをした方がいいもの
預貯金の名義変更
故人名義により登録された預貯金口座は、死亡届が受理された直後に凍結されて、事実上相続の確定がなされるまでは凍結が解かれることはありません。
遺言書や遺産分割協議により相続人を定めたら、口座の名義人を故人から相続人に変更します。その際に、預貯金額に応じた相続税が発生します。
故人が死亡した10カ月以内に申告・納税をしなければなりません。
■期限
・相続確定後速やかに
■手続き場所
・各金融機関
■持ち物
・名義変更依頼書
・改製原戸籍謄本
・被相続人(故人)の戸籍謄本
・除籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・印鑑証明書
・遺産分割協議書(コピー)
・通帳
株式の名義変更
故人名義で登録されている株式は、死亡届が受理された直後から売買ができなくなります。遺言書や遺産分割協議により相続人を定めたら、株式の名義人を故人から相続人に変更します。
■期限
・相続確定後速やかに
■手続き場所
・証券会社または、株式発行法人
■持ち物
・株式名義書換請求書
・株券
・改製原戸籍謄本
・被相続人(故人)の戸籍謄本
・除籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・印鑑証明書
・遺産分割協議書
加入電話の名義変更
■期限
・確定後速やかに
■手続き場所
・電話会社
■持ち物
・電話加入承継届
・被相続人及び相続人の戸籍謄本
・相続人の印鑑証明書
公共料金の名義変更
■期限
・確定後速やかに
■手続き場所
・電力会社、水道局、ガス会社など
■持ち物
・要問合せ
パスポート
■手続き場所
・最寄りの警察署
運転免許
■手続き場所
・都道府県旅券課
7.葬儀後に行う法事・法要
葬儀後に必要となる手続きの他に、ここでは、必要な法要に関してご紹介していきます。
法要を行う意義は故人を偲ぶこと、そして法要は成仏を祈る神聖な儀式です。
他にも、親族が集まりより親交を深めて親族として新たなる形で一歩を踏みだす場でもあります。悲しみや苦しさも伴う法要ですが、法要に足を運んでくださる方々へ普段の感謝の気持ちを込めながら、自分の気持ちの整理と近況の挨拶を丁寧に行い対応することが大切です
・初七日法要
初七日とは、現世とあの世の境にある三途の川のほとりに到着する日のことを指します。この日に行われる裁きにより急流か緩流のどちらか一方が定まる重要な日になります。
最近においては社会的な変化で親戚が遠方にいることが多いため、親戚や知人に初七日に再び足を運んでもらうのは大変だと配慮して葬儀当日に還骨法要と並行して行うことが多くなっています。
・四十九日法要
四十九日は名前をご存じの方も多々いるかもしれません。これは、故人の来世の行き先が定まる日として重要な意味合いを持ち、遺族や親族を招き法要を営む儀式を行います。
読経、焼香をこなした後に会食となるのが一般的な流れとなります。四十九日の裁きが終了すると、故人の魂は現世から離れていき、遺族は「忌明け」として日常生活に戻っていきます。お墓を準備されている場合は、この日に納骨することが一般的に多いです。
・百か日法要
故人が亡くなられた命日から100日目(命日も含む)に営む法要のことを百か日法要といいます。四十九日などと同様に、僧侶の読経、焼香をこなした後に会食をすることが一般的な流れになります。
また、百か日法要の日までにやるべきこととしては、葬儀に関して香典や供物を頂戴していただいた方々へのお礼の挨拶と香典返しです。このマナーはきっちりと守ることが大切です。
8.まとめ
家族が亡くなられた場合には、あらゆる手続きや届け出を行わないといけません。その種類や数は多く、負担も大変になってきますが、遺族や故人の身近な方々が引く受ける必要があります。期限が定まっているものや、事前に準備する必要があるものまで多岐にわたりますので、葬儀という大変な負担の後ですが、円滑に手続きなどに着手できるようにある程度把握しておくといいでしょう。
ここまででご紹介した手続きの種類やその概要を参考にして少しでもお役に立てれば幸いです。
Warning: array_shift() expects parameter 1 to be array, object given in /home/users/0/ceremo-heart/web/atowa.info/wp/wp-content/themes/ceremo_vol2.0/single-report.php on line 205